配当利回りが高いと、つい「お得そう」と感じてしまいますよね。
でも最近は、「この配当、来年もちゃんと続くのかな?」と不安になることも増えてきました。
そんな中で注目されているのが、DOE(株主資本配当率)を配当方針に取り入れる企業です。
「株主資本に対して◯%以上は配当する」と明示してくれていることで、安心感があるという声もよく聞きます。
でも実際のところ、DOEを採用している企業=本当に安心と言えるのでしょうか?
方針だけ立派で、実績が追いついていないケースもあるのでは…?
今回は、企業が掲げるDOEの方針値と、実際のDOE実績に注目し、
その“ギャップ”から「狙い目」と「注意銘柄」を探ってみました。
リストの見方や指標の読み解き方も紹介しているので、
「どこを見ればいいの?」という方も、ぜひ参考にしてみてくださいね。
DOEとは?配当利回りとは違う“もうひとつの視点”

DOE(株主資本配当率)とは、
企業が「株主から預かっている資本に対して、どれだけ配当を出しているか」を示す指標です。
DOE(%) = 1株当たり年間配当金 ÷ 1株当たり純資産(BPS) × 100
たとえば、配当が年間100円で、1株あたりの純資産(BPS)が2,000円なら、DOEは5%になります。

つまり株主資本の5%を配当に回しているという意味になります。
なぜDOEが注目されるの?
配当利回りは株価に左右されるため、
「株価が下がれば利回りが上がる=必ずしも健全とは言えない」という面があります。
一方、DOEは企業の純資産に対する配当の割合を示すため、
企業の健全性や還元方針を測る上で、より安定的で持続可能な指標として注目されています。

配当利回りだけで判断すると見誤ることもあるな…と感じていたので、DOEのように“企業の配当方針の軸”を示す指標はとても参考になります。特に、継続性を重視する投資スタイルの方には相性が良いと思います!
なぜDOEが注目されるのか?投資判断への活かし方


配当利回りが高い銘柄を見ると、「おっ、お得かも?」とつい目を引かれますよね。
でも利回りって、株価が下がるだけでも数字が上がってしまうので、本質的に“企業がどれくらい配当に力を入れているか”までは見えません。
そこで活躍するのがDOE(株主資本配当率)です。
DOEは、株価に影響されず、企業が保有する純資産(BPS)に対してどれだけ配当を出しているかを示すので、
その会社の還元姿勢や配当の持続力を図るのに、とても便利な指標なんです。
たとえば──
- DOEが高いのに、方針としては低く抑えている企業:配当が好調な“上振れ”パターンかもしれません
- 方針が高いのに、実績が大きく下回っている企業:一時的な不調か、還元姿勢に変化があったかも?
こういったギャップを見ることで、
「この企業、今はちょっと無理して出してるかも…?」とか、
「ちゃんと配当にコミットしてるな」というように、“配当の質”が見えてくるんです。
「利回りは高いけどちょっと不安」
そんな銘柄を見かけたときに、DOEをチェックしてみると新しい発見がありますよ。
たとえば、ニチリン(5184)という企業。
DOEの方針は「2.5%」ですが、直近の実績は「4.3%」と大きく上振れしています。
配当利回りも5%超えと高く、利益がしっかり出ている中で、還元も積極的に行っている印象です。
こうした「方針に対する実績の上振れ」は、投資家にとって好感材料になりやすく、比較的安心して中長期で保有しやすい銘柄と言えるかもしれません。
では、他の銘柄ではどうでしょうか?
方針と実績のギャップを一覧にまとめてみたので、ぜひチェックしてみてください。
DOE方針と実績を並べた一覧リスト(株価情報は、2025年5月11日時点)


ここでは、DOE(株主資本配当率)を開示している企業を対象に、
「企業の方針(目標値)と、実際に出しているDOE(実績)」を並べて比較できる一覧リストを作成しました。
たとえば──
- 方針よりも実績が高い企業は、想定以上に積極的な配当を行っている可能性があり、投資家にとっては“好感材料”となることが多いです。
- 方針に達していない企業は、一時的な業績要因か、配当政策にブレがあるかもしれません。
ギャップの背景を個別に確認することが大切です。
一覧では、配当利回りや財務状況、増配年数などの情報もあわせて掲載しているので、
「配当の安定性」や「将来性」を読み取るヒントとして、ぜひご活用ください。
さらに、「連続増配年数」や「自己資本比率」など、安定性に関する情報も載せています。
このリストはTwitterでも定期的に更新・シェアしています。
他にもさまざまな切り口で銘柄を整理しているので、
「もう少し見てみたいかも…」と思った方は、そちらもチェックしてみてくださいね。
📌「DOEを採用していれば、配当は安心?」
— しけなぎ@銘柄分析ツール公開中📊 (@shikenagi110) May 11, 2025
…そう思っていたけど、
方針は立派でも、実績が追いついていない企業もあるかも?
今回は、DOEの方針と実績の“ギャップ”に注目して、
還元姿勢や配当の持続性が見えてくる企業リストを作りました📊
スクリーニングの軸はこんな感じです👇
✅… pic.twitter.com/io8wTkwr0h
パッと見は数字が多くて難しそうに見えるかもしれませんが、以下のような視点で眺めてみると、意外な気づきが得られるかもしれません。
- 配当は高いけど、DOEは実は未達…?
- 還元方針が明確で、実績も上回っている企業は?
- 方針を下げているのに、高DOEを維持している理由は?
- DOE(実績):実際にどれだけ株主資本を配当に回しているか
- DOE方針:企業が掲げている“配当の目安”
- ギャップ:そのズレから企業の姿勢や安定度が見えてきます
配当の“質”や、持続可能性を見極めるヒントとして、この表を眺めてみるときっと発見があると思います。
このリスト、どう見る?判断ポイントを解説


このリストでは、DOEの「実績」と「方針」、そしてそのギャップを一覧で並べています。
どれをどう見ていけばよいか、ざっくりとした読み方のヒントをまとめました。
- ギャップがプラスの銘柄(DOE実績 > 方針)
- 想定以上の配当が出ている状態です。
- 業績が好調で、方針以上の還元をしてくれている可能性が高く、好感材料として見られやすいポイントです。
- このパターンは「中長期で保有しやすい銘柄」として注目されます。
- ギャップがマイナスでも小さい(±1%未満)銘柄
- 方針から少しズレているだけで、配当政策にブレがあるわけではないと見ていい水準です。
- 営業利益やキャッシュフローの変動など、一時的なズレの可能性もあるので、あまり過敏になる必要はありません。
- ギャップが大きくマイナスの銘柄(-2%以上など)
- DOE方針に対して実績が大きく届いていない状態です。
- 業績悪化や、方針の見直しがあった可能性もあり、還元姿勢が弱まっている兆候としてチェックが必要です。
このように、「利回りが高い=安心」とは言い切れない場面でも、
DOEのギャップを見ることで、企業の配当に対する本気度や安定性が読み取れるようになります。
次章では、DOEのギャップに注目しながら、「狙い目の銘柄」と「注意が必要な銘柄」をそれぞれピックアップしてご紹介します。
気になる企業があれば、ぜひチェックしてみてください!
注意したい銘柄:ギャップが気になる企業たち


配当利回りが高く見えても、DOEの実績が方針を大きく下回っているときは少し注意が必要です。
一時的な業績悪化か、還元方針の見直しなのか、背景を見極める視点が求められます。
ここでは、DOE実績が方針を下回っている“ギャップ型”の中でも特に注目したい企業をいくつかピックアップしてみました。
今後の方針変更や減配リスクなどを見極める際のヒントになればと思います。
コンフィデンス・インターワークス(7374)


コンフィデンス・インターワークスは、ゲーム・エンターテインメント業界を中心に人材派遣・紹介・メディアなど多角的に展開する企業です。
業界の成長と連動した業績拡大が続き、高いROE(18.2%)と営業キャッシュフローマージン(13.8%)を誇るなど、収益性と効率性に優れたビジネスモデルが特徴です。
基本情報
- 株価:1,455円
- PER:8.35倍
- PBR:1.60倍
- ROE:18.2%
- 配当利回り:4.47%
- 配当性向:45.1%
- DOE(実績):7.2%
- DOE方針:中期的に10%超を目標
- ギャップ:-2.8%
DOE方針


出典:コンフィデンス・インターワークス
コンフィデンス・インターワークスは、中期的な利益還元の目標として、DOE(株主資本配当率)10%超を掲げています。
現時点でのDOE実績は7.2%と、目標には届いていないものの、将来的な還元強化への意志は明確に示されています。
配当性向30%超も掲げており、安定配当と成長投資の両立を基本方針としています。
キャッシュフロー面の健全性


営業キャッシュフローは安定しており、フリーCFも黒字が続いています。
ただ、設備投資や人材投資のタイミング次第では、フリーCFがぶれるリスクもあるため、配当余力は今後も注視が必要です。
ギャップの背景にある不安材料
コンフィデンス・インターワークスのDOE実績は7.2%で、目標である10%超には届いておらず、-2.8%のギャップが生じています。
このギャップの背景には、以下の3点が関係していると考えられます。
- 自社株取得の影響によるBPSの急上昇
- 2024年度に自己株式を約1,000万株取得しており、その結果としてBPS(1株当たり純資産)が大幅に上昇しました。
- DOEは「配当金 ÷ BPS」で算出されるため、BPSの急増はDOEの低下要因となります。
- 一見すると還元強化に見える自己株取得が、DOE目標から遠ざかる結果を招いている点は注意が必要です。
- 業績と配当の連動性が高いビジネスモデル
- ゲーム・エンタメ業界に強みを持つ同社は、業績が景気やヒットタイトルに左右されやすい構造を持ちます。
- そのため、好調時には高い収益性(ROE18.2%)を実現できる一方で、利益成長に波がある点は否めません。
- 今後、業績に陰りが出た場合には、配当性向維持やDOE目標とのバランスが崩れるリスクも考えられます。
- 累進配当や安定配当の方針が明記されていない
- DOE10%超という高い目標は掲げているものの、「減配しない」「下限◯%を維持」といった方針は明示されていません。
- また、配当金残年数は「5年」とやや短く、過去の実績ベースで見たときの配当の安定性には不安が残る部分もあります。
- 現時点では、「高DOEを目指す」姿勢は見られる一方で、それを実現・維持するための設計や実績面ではまだ発展途上といえそうです。
このように、目標とのギャップは一時的な事情だけでなく、構造的な課題も含んでいると見られます。
配当性向や財務体質は好感できる一方で、DOE10%を継続して達成するためには、利益の安定性や資本政策の整備が今後の焦点になるといえます。



「DOE10%超」という明確な目標を掲げる姿勢は好感ですが、現時点ではギャップが大きく、残年数や累進姿勢にやや物足りなさを感じます。
業績に連動しやすい業態であるだけに、保守的なスタンスでの投資判断が求められそうです。
ジーテクト(5970)


ジーテクトは、ホンダ系の自動車骨格部品メーカーとしてプレス部品の開発・製造を手がける企業です。
特にグローバルでの展開力に強みがあり、海外比率も高め。安定した財務体質と堅実な経営が特徴です。
基本情報
- 株価:1,603円
- PER:6.90倍
- PBR:0.34倍
- ROE:7.4%
- 配当利回り:4.62%
- 配当性向:21.8%
- DOE(実績):1.6%
- DOE方針:2031年3月期に3.0%を目標
- ギャップ:-1.4%
DOE方針


出典:ジーテクト
ジーテクトは中長期的な株主還元の指標として、2031年3月期までにDOE 3.0%達成を目指す方針を掲げています。
また、2025年3月期からは配当性向30%以上を目安とするなど、持続的かつ安定的な配当方針を明示しています。
キャッシュフロー面の健全性


営業キャッシュフローはおおむねプラスを維持しており、安定的な本業収益が伺えます。
一方、設備投資などに伴う投資キャッシュフローはマイナスが続いており、フリーキャッシュフローの余力には波も見られます。
ギャップの背景にある不安材料
ジーテクトのDOE実績は1.6%と、目標の3.0%(2031年3月期)に対して約半分の水準にとどまっています。
このギャップの背景には、以下の3点が影響していると考えられます。
- 控えめな配当性向とROE水準
- 現時点の配当性向は21.8%と控えめで、ROEも7.4%とやや低めにとどまっており、この2つの組み合わせではDOE(ROE×配当性向)の押し上げが難しい構造となっています。
- 2025年3月期から配当性向30%以上を目安とする方針が打ち出されていますが、DOEを3%へ到達させるためには、ROEの一段の引き上げが不可欠といえます。
- フリーキャッシュフローのブレと外部環境の影響
- 営業キャッシュフローは安定しているものの、フリーCFは年によって大きく変動しており、特に設備投資や原材料価格の変動が大きい自動車業界では、予見性の低さが配当政策に影響を及ぼすリスクがあります。
- さらに、ホンダとの関係性が高いことによる業績の連動性や、世界景気の変動も無視できません。
結果として、配当余力の継続的な積み上げには慎重さが求められる環境にあります。
- 中長期方針と実績の乖離
- DOE3%という目標水準は2031年という長期スパンで掲げられており、裏を返せば、短期的にはギャップの解消が進みにくいと読み取ることもできます。
- また、PBRが0.34倍と極めて低く、市場からの評価が十分得られていない状態であることも、還元方針の実効性への不安につながりやすい要素です。
このように、ジーテクトのDOEギャップは、還元スタンスの変化途上にあることを示す構造的な乖離といえます。
方針の明確化は評価できる一方で、ROE向上やキャッシュ余力の積み増しがなければ、目標達成には時間を要する可能性が高く、投資判断にはやや慎重さが求められる局面といえます。



DOE目標や配当方針は明確で好感が持てる一方、現時点では還元余力にやや慎重さも感じます。
高い配当利回りと安定した財務体質は魅力的ですが、今後の利益成長とキャッシュ創出力の動向を見極めながら、慎重に判断していきたい銘柄です。
ライト工業(1926)


ライト工業は、法面(のりめん)工事や地盤改良工事などに強みを持ち、公共インフラを中心とした安定受注を背景に事業を展開する建設企業です。
高い自己資本比率(72.5%)と安定したキャッシュフローに支えられた、堅実な経営が特徴です。
基本情報
- 株価:2,697円
- PER:13.26倍
- PBR:1.40倍
- ROE:9.37%
- 配当利回り:2.78%
- 配当性向:41.6%
- DOE(実績):3.9%
- DOE方針:中期的に6%以上を目標
- ギャップ:-2.1%
DOE方針


出典:ライト工業
ライト工業は、株主還元の方針として、中期的にDOE6%以上を目標に掲げています。
ROEや配当性向の向上を通じて、PBR1.5倍以上の達成を目指す戦略の中で、DOEは明確な中間指標として位置づけられています。
キャッシュフロー面の健全性


営業キャッシュフローは安定して推移しており、財務レバレッジを抑えた堅実経営が光ります。
フリーキャッシュフローも長期的に黒字傾向が続いており、資本政策に柔軟性のある体質といえます。
近年は自己株式の取得に多くの資金を充てており、この傾向が続く場合、将来的に配当に回せる資金が圧迫される可能性もあります。
株主還元としては前向きな取り組みですが、配当とのバランスには引き続き注視が必要です。
ギャップの背景にある不安材料
ライト工業は、DOE6%以上の実現を中期目標として掲げていますが、直近のDOE実績は3.9%にとどまっており、-2.1ポイントのギャップが生じています。
このギャップには、以下の3点が影響していると考えられます。
- ROEの水準がやや控えめ
- ROEは9.37%と決して低い水準ではないものの、DOE=ROE×配当性向の関係から考えると、目標DOE6%を達成するにはROEまたは配当性向の一段の引き上げが必要です。
- 現状の配当性向(41.6%)とROEの組み合わせでは、自然体ではDOE4%前後にとどまる構造であり、
意図的な還元強化や利益成長が伴わないと、目標に届きづらい状況です。
- 自己株式取得が還元の主軸に
- 近年、自己株式の取得を積極的に実施しており、株主還元への意識は高いものの、その分、配当金としての分配余地が抑えられている面もあります。
- 自己株取得は将来的な1株当たり指標の向上に貢献する一方で、DOEには直接反映されないため、DOEギャップという観点からはネガティブに働く場合があります。
- 累進配当の明示なし・成長トリガーもやや限定的
- 累進配当方針を明示していないため、仮に利益が横ばいもしくは減少した場合、配当水準の維持に対する確約が読み取りづらい状況です。
- また、ライト工業のビジネスはインフラ補修・地盤改良などの公共案件が中心であり、急成長よりも安定重視の性格が強いです。
そのため、ROEや利益の伸びしろが限定的である点も、DOE目標とのギャップにつながりやすい要因です。
このように、ライト工業のDOEギャップは、現行の利益体質と還元スタンスに基づいた構造的なものといえます。
株主還元の姿勢自体は評価できますが、目標達成にはROE向上や還元方法の見直しといった追加施策が必要となる可能性があります。



株主還元への意識は高く、資本効率向上の明確なロジックも評価できます。
ただし、現時点ではDOEの目標到達に向けた力強さには欠ける印象で、還元余力の使い道にやや割り切りが必要かもしれません。
保守的ながらも着実な配当を期待する投資家にとっては、じっくり付き合える銘柄だと思います。
アサヒグループホールディングス(2502)


アサヒグループホールディングスは、国内外でビールや発泡酒、清涼飲料水、食品事業を展開する飲料最大手の一角です。
「アサヒスーパードライ」や「カルピス」などの主力ブランドを有し、海外展開も積極的に進めています。
基本情報
- 株価:2,015円
- PER:17.06倍
- PBR:1.10倍
- ROE:7.49%
- 配当利回り:2.58%
- 配当性向:37.4%
- DOE(実績):2.9%
- DOE方針:4.0%以上
- ギャップ:-1.1%
DOE方針


出典:アサヒグループホールディングス
アサヒグループは、「DOE4%以上を目指す累進配当」を掲げています。
累進配当とは、減配せず、横ばいまたは増配を維持する方針のことであり、実質的な「減配しない宣言」とも言えます。
利益成長の波はあるものの、長期にわたり安定した還元姿勢が特徴です。
キャッシュフロー面の健全性


アサヒグループの営業キャッシュフローは安定しており、毎年1,500億円〜2,500億円規模の水準を確保しています。
一方で、設備投資やM&Aなどの投資キャッシュフローが多額に発生する年もあり、フリーキャッシュフローは年によって波があります。
特に2016年や2020年など、一時的に大幅なマイナスに転じた年もあり、事業成長に向けた投資活動の積極性が伺えます。
また、自己株式取得による財務CFの流出も大きいため、今後の投資と株主還元のバランスには注視が必要です。
ギャップの背景にある不安材料
アサヒグループは「DOE4%以上を目標とする累進配当」を掲げていますが、直近のDOE実績は2.9%にとどまり、目標とのギャップは-1.1ポイントとやや大きめです。
この背景には、以下の3つの要因があると考えられます。
- ROEの伸び悩みと資本の膨張
- ROEは7.49%と同業他社と比較してもやや低く、資本効率にやや物足りなさがあります。
- 近年は大型M&Aや積極的な海外展開により自己資本が増加傾向にあり、その結果BPSが上昇しやすく、DOEの計算上はマイナスに作用しています。
- 投資活動の負担とフリーCFの不安定さ
- 営業キャッシュフローは安定している一方で、M&Aや大型設備投資が多く、フリーキャッシュフローは年度によって大きく変動します。
- 実際に、過去には大幅なフリーCF赤字を計上した年もあり、配当余力にブレが生じやすい構造が見られます。
- 自己株取得などの資本政策によるBPSの増加
- 近年は自己株式の取得も積極的に行っており、それがBPS(1株あたり純資産)の増加要因となっています。
- DOE(=配当÷BPS)の構造上、配当が増えてもBPSの伸びがそれを上回ればDOEは下がるため、結果として方針とのギャップが拡大しています。
このように、アサヒグループのDOEギャップは一時的というより構造的な要因によるものであり、財務体質や資本政策の見直しがない限り、ギャップ解消には時間がかかる可能性があります。
方針は評価できるものの、現時点では実効性に慎重な視点が求められます。



累進配当や明確なDOE方針など、株主還元の方針は評価できますが、目標とのギャップはやや大きく、還元の実効性には慎重な目線が必要です。
配当水準の維持には問題なさそうですが、株価水準を意識するなら、今後のフリーCF推移やROEの改善にも注目したいところです。
狙い目の銘柄:実績が方針を上回る企業たち


一方で、DOEの実績が方針をしっかり上回っている企業は、還元姿勢が強く、配当に積極的な印象があります。
中長期での安定した配当を期待したいときに、こうした“上振れ型”は心強い存在です。
ここでは、方針に対して実績が大きく上回っている“還元重視型”の銘柄を紹介します。
利回りや財務、成長性もあわせてチェックしてみてくださいね。
山田コンサルティンググループ(4792)


山田コンサルティンググループは、フィナンシャル分野の再生支援やM&A、事業承継などを中核に、コンサルティングから投資支援まで幅広く手掛ける企業です。
再生支援や成長支援の実績が豊富で、ROEは18.2%と非常に高く、営業CFマージンも17.2%と安定した収益力が強みです。
基本情報
- 株価:1,656円
- PER:11.5倍
- PBR:1.75倍
- ROE:18.2%
- 配当利回り:4.65%
- 配当性向:50.6%
- DOE(実績):8.2%
- DOE方針:5%を下限とした安定配当
- ギャップ:+3.2%
DOE方針


出典:山田コンサルティンググループ
山田コンサルティンググループは「高水準かつ安定的な配当」を基本方針とし、DOE5%を下限とする配当政策を掲げています。
業績が下振れして赤字となる場合でも、DOE5%水準を維持する方針で、株主への安定還元を重視した姿勢が明確に示されています。
キャッシュフロー面の健全性


営業キャッシュフローは毎期しっかりと黒字を維持し、フリーキャッシュフローも大きな赤字は見られません。
自己株式の取得も落ち着いており、配当原資を圧迫する要因は限定的です。
財務構造も良好で、自己資本比率80.1%と高水準。
安定したキャッシュ創出と財務基盤の両面から、還元余力には十分な余裕があります。
ギャップの背景にある安心材料
山田コンサルティンググループは、DOE(株主資本配当率)5%を下限に安定配当を継続するという強い方針を掲げています。
これに対して直近のDOE実績は8.2%と、方針を大きく上回る水準にあり、配当の持続性と柔軟性の両面で安心感がある企業です。
この安心材料の背景には、以下の3点が挙げられます。
- 高ROE(18.2%)の維持によるDOE押上げ効果
- DOEは「ROE×配当性向」で構成されるため、仮に配当性向が高くてもROEが低ければDOEは伸びません。
- 山田コンサルはROEが18.2%と非常に高く、資本効率が良いことから、配当性向50.6%でも十分に高DOEを維持できています。
- これは、成長と還元を両立できている証拠でもあります。
- 営業キャッシュフローの強さと安定性
- 営業キャッシュフローマージンは17.2%と非常に高水準で、営業活動から安定してキャッシュを生み出せています。
- 加えて、直近数年の営業CFはブレが少なく、自己株取得などの戦略的な支出をこなしても配当を維持する体力があることを示しています。
- 内部留保に頼らず、キャッシュの実力で配当を支える構造ができている点も安心材料です。
- DOE方針が「下限」設定であることの意義
- 他社のDOE方針は「目標値」として掲げられることが多い中、山田コンサルは「5%を下回らないようにする」と明言しています。
- これは、業績が赤字になっても一定水準の還元を継続するという強い意思表示であり、配当投資家にとっては明確なリスクヘッジになります。
このように、高ROE×安定キャッシュ×明確な下限設定という3点セットが、DOEギャップの「安心材料」を構成しています。
単に実績が方針を上回っているだけでなく、構造的に配当を支える土台があることが最大の強みといえます。



DOEを“下限”としてしっかり示してくれているのは、配当を重視する立場から見ると安心感があります。
営業キャッシュフローの安定ぶりや、自己株取得を含めた株主還元の姿勢にも誠実さが感じられて、じっくり付き合える企業だなという印象です。
派手さはないけれど、地に足のついた堅実な経営スタイルが、長期投資に向いていると感じました。
新晃工業(6458)


新晃工業は、業務用空調機や冷暖房設備の製造を主力とし、大規模施設・ビルメンテナンス分野で強みを持つ企業です。
中国・タイなど海外展開も進めており、安定成長をベースに堅実な経営を続けています。
基本情報
- 株価:1,223円
- PER:12.16倍
- PBR:1.40倍
- ROE:11.3%
- 配当利回り:4.09%
- 配当性向:39.6%
- DOE(実績):5.9%
- DOE方針:最低でも3.5%
- ギャップ:+2.4%
DOE方針


出典:新晃工業
新晃工業は、株主還元の目標としてDOE3.5%を下限とする方針を明示しています。
また、配当性向は50%をめざしつつ、自己株式取得も含めた総還元策を中期的に推進。
戦略的投資とのバランスを取りながら、「持続的な利益成長+還元の両立」を掲げる構造が特徴です。
キャッシュフロー面の健全性


営業CFは安定的に黒字を維持し、設備投資や自己株取得をこなしつつもフリーCFは概ねプラス。
2025年度には自己株取得1,000百万円の実施が見込まれていますが、これは十分なキャッシュからの支出であり、財務を損なうものではありません。
自己資本比率は69.4%と堅実な水準で、外部環境変動にも強い基盤を持っています。
ギャップの背景にある安心材料
新晃工業は、DOE3.5%を下限とする明確な還元方針を掲げており、実績DOEは5.9%と大きく上回っています。
このギャップの裏には、安定した事業収益と計画的な資本政策がしっかりと根付いており、以下の3つの観点から「安心材料」として評価できます。
- 配当水準を無理なく支えるROEと配当性向
- ROEは11.3%と安定的に高く、配当性向は約40%と無理のない水準です。
- DOE=ROE×配当性向であることから、現状の両指標のバランスであれば、無理に還元を増やさずとも5%超のDOEは維持可能。
- この点は、財務的に自然体で方針を上回れる構造になっていることを意味します。
- 営業キャッシュフローの強さとブレの少なさ
- 営業キャッシュフローは、過去10年にわたって大きな赤字がなく、近年は増加傾向。
- 2024年度には営業CFマージンが17.2%と非常に高く、本業のキャッシュ創出力の強さが伺えます。
- 内部留保に頼らず、実キャッシュで配当や投資、自己株取得までこなしている点は安心材料です。
- 財務戦略に組み込まれた明確な資本配分ルール
- 中期戦略では、DOE3.5%を“最低ライン”としつつ、営業CF+借入等を活用して、自己株取得と戦略投資をバランスよく実行する設計になっています。
- これは単に還元を優先するのではなく、成長と還元の両立を明示したポリシーとして、投資家への信頼感につながります。
このように、新晃工業は“結果的にDOEが高い”というだけでなく、財務構造・事業収益・資本政策の各面に裏打ちされた「意図的な高DOE体制」を構築しており、ギャップにはしっかりとした裏付けがあります。



DOE3.5%を「下限」としている方針には、配当を大切にする企業の姿勢がしっかり表れているなと感じました。
キャッシュフローの安定感や、自己株取得まで含めたトータルな還元設計も好印象で、無理なく続けられるスタンスに安心感があります。
どちらかというと派手さはありませんが、堅実で着実に歩む姿勢が魅力で、長く付き合いたくなるような銘柄だと思います。
アドソル日進(3837)


アドソル日進は、社会インフラ向けシステムやIoT・セキュリティ、地理情報システムなどを手がける独立系のシステムインテグレーターです。
ストック型ビジネスの拡充や高付加価値領域への展開が進んでおり、収益性と安定性の両面で評価される企業です。
基本情報
- 株価: 1,082円
- PER: 14.99倍
- PBR: 2.70倍
- ROE: 14.29%
- 配当利回り: 3.42%
- 配当性向: 40.9%
- DOE(実績): 9.4%
- DOE方針: 6%以上
- ギャップ: +3.4%
DOE方針


出典:アドソル日進
アドソル日進は配当方針として、「DOE6%以上」「配当性向50%以上」「1円以上の累進増配」という3本柱を掲げています。
戦略投資とのバランスを意識しながらも、成果配分に加えて積極的な株主還元に努める姿勢が明確です。
キャッシュフロー面の健全性


営業キャッシュフローは安定的に黒字を維持し、近年は成長投資を進めながらも堅調なフリーキャッシュフローを確保。
2025年時点で自己資本比率は70.1%と高水準で、長期的な配当・自己株取得の持続力にも安心感があります。
大規模な自己株取得も一段落しており、今後は配当還元に重点を置くフェーズに入ってきている印象です。
ギャップの背景にある安心材料
アドソル日進は、DOE6%以上という明確な配当方針を掲げていますが、直近のDOE実績は9.4%と、それを大きく上回っています。
このプラスのギャップには、企業としての健全な経営基盤と還元姿勢がしっかりと現れており、以下のような3つの観点から安心感のある構造となっています。
- 構造的に高DOEを実現する指標バランス
- ROEは14.29%と高水準であり、資本効率の良さが際立っています。
- 一方で、配当性向は40.9%と抑え気味にコントロールされており、この両者の掛け合わせによりDOEは無理なく自然に高水準を維持できている状況です。
- 目標の6%を「頑張って達成」しているというよりも、もともとの体質として過度な還元に頼らずとも高DOEを出せる構造が安心感につながっています。
- 安定したキャッシュ創出と還元余力
- 営業キャッシュフローは、ここ10年安定して黒字を維持しており、年々増加傾向にあります。
- また、設備投資や成長投資をこなしながらも、フリーキャッシュフローが大きく崩れる場面は少ない点も好材料です。
- こうしたキャッシュ創出力の土台があることで、DOE方針を実行できる裏付けとなっており、実効性の高い方針として機能しています。
- 明確で信頼感のある株主還元ポリシー
- アドソル日進は、「DOE6%以上」「配当性向50%以上」「1円以上の連続増配」という3点セットを明確に掲げています。
- この方針は数値目標として分かりやすく、かつ“成果配分+持続性”の両立を意識した内容で、投資家にとっては非常に好感の持てる設計です。
- また、2026年3月期から中間配当の導入を予定しており、還元の頻度や安定性の面でも前向きな取り組みが見られます。
このように、アドソル日進の高DOEは偶然ではなく、資本効率・キャッシュ創出力・明快な方針の3つがそろっている結果だといえます。
DOE6%という水準は一般的に高い部類に入りますが、それを“普通に達成できている”企業体質そのものが、投資家にとっての安心材料です。



DOE6%以上という配当方針をしっかりと掲げて、それを大きく上回る実績を出している姿は、とても頼もしさを感じます。
キャッシュフローも安定していて、還元姿勢も一貫しており、数字だけでなく中身にも説得力がありますね。
派手さはないですが、長く付き合っていくうえで大切にしたい要素が揃っている印象で、配当を軸にじっくり持ちたい銘柄だと思いました。
青山財産ネットワークス(8929)


青山財産ネットワークスは、財産コンサルティングや事業承継支援、不動産の有効活用を軸に事業を展開している企業です。企業オーナーや富裕層を中心とした資産活用提案に強みを持ち、ストック型の収益基盤が整っています。
基本情報
- 株価:1,890円
- PER:18.47倍
- PBR:4.63倍
- ROE:25.2%
- 配当利回り:2.70%
- 配当性向:46.0%
- DOE(実績):12.5%
- DOE方針:10.0%水準
- ギャップ:+2.5%
DOE方針


出典:青山財産ネットワークス
青山財産ネットワークスは株主還元の基本方針とし「配当性向50%水準」「累進配当の継続」「DOE10%水準の維持」の3つを掲げています。
これは単なる成果還元にとどまらず、資本コストを上回る還元を目指すという戦略的な姿勢を示すものです。
キャッシュフロー面の健全性


営業キャッシュフローは概ね安定しており、フリーキャッシュフローも継続的に黒字圏を維持。
2024年度には大規模な自己株取得(20億円超)を実施していますが、財務基盤を大きく損なう動きは見られません。
自己資本比率は43.6%とやや低めながらも、一定の余力を持ちつつ機動的な資本政策を展開している点が特徴です。
ギャップの背景にある安心材料
青山財産ネットワークスのDOE実績は12.5%と、目標とする10%水準を大きく上回っています。
これは一時的な偶然ではなく、企業の収益構造や資本政策に基づいた堅実な裏付けがあります。
以下の3点がその「安心材料」として挙げられます。
- 高いROEが支えるDOE水準
- ROEは25.2%と非常に高く、収益性の高さが際立っています。
- DOEは「ROE×配当性向」で算出されるため、仮に配当性向を抑えても自然とDOEが高くなります。
- これは配当が過剰でない一方で、十分に資本効率が高いことを意味しており、安心して見ていける構造です。
- 中期的に継続してDOE10%超を維持している実績
- 2022年度~2024年度にかけて、DOEは11.0%→11.2%→11.5%と安定して高水準をキープ。
- 単年の突出ではなく、数年にわたって方針を上回る成果が続いている点は、配当の持続性に対する信頼感を高める材料です。
- 配当性向とDOEを両輪とする明確な方針
- 青山財産ネットワークスは「配当性向50%水準」「DOE10%水準の維持」という2つの柱をはっきり示しており、どちらか一方に偏ることなく総合的に還元姿勢を取っています。
- 方針が曖昧な企業も多い中で、ここまで明確な還元方針を持っていること自体が投資家にとって安心材料になります。
このように、収益性の高さ×長期的な実績×明確な方針という3つの要素がそろっていることが、DOEの高実績にしっかりと裏付けを与えています。
単なる数値の上振れではなく、企業の戦略に根差した配当余力だと読み取れます。



DOE実績がしっかり10%を超えていて、方針とのズレがプラスに出ているのは安心感があります。
還元方針もわかりやすく、ブレの少ない配当姿勢に信頼が持てそうです。
配当利回り自体は少し控えめですが、それでも堅実な配当成長と明確な方針があるので、じっくり持つのに向いている印象を受けました。
まとめ:DOEの“ギャップ”から見えてくるもの
配当利回りだけでは見えにくい「配当の質」や「企業の本気度」。
今回あらためて感じたのは、DOEの方針と実績の“ギャップ”に目を向けることで、数字の裏にある企業の姿勢が見えてくるということでした。
たとえば、こんな視点で見ると、読み解きやすくなります。
- 実績が方針を上回っている企業は、自然体でも還元ができている安定経営の可能性
- ギャップが小さい企業は、一時的なブレか構造的な変化かを丁寧に見極めたい
- 目標が高く実績が追いついていない企業は、成長過程にあるのか、方針の見直しが必要なのかを見ていく視点が大切
こうした「数字のズレ」は、ただの差ではなく、その企業の経営戦略や配当姿勢を映すサインとしても使えます。
配当投資をしていると、「利回りの高さ」に目が行きがちですが、ときにはこうした“配当の質”を見る視点も持っておくと、より納得感のある判断ができるかもしれません。
気になる銘柄があれば、ぜひDOEの方針と実績、どんなギャップがあって、何が背景にあるのかをゆっくり眺めてみてくださいね。
当ブログは、投資の勧誘を目的としたものではありません。
投資に際しては、ご自身の判断と責任で行っていただくようお願い申し上げます。



最後まで読んでいただき、ありがとうございました!